1 焼きそば、唐揚げ、フライドポテト。 たこ焼きイカ焼きかき氷。 ・・・そしてでかいクレープ。 「食い過ぎだろ・・・。」 「ん?なんか言った?」 口の端にクリームを付けながら、娘が俺の顔を覗き込んでくる。 「いや、なんでもないよ。 それより、お父さんにも一口くれよ。」 娘は、俺の顔とクレープをそれぞれ一瞥して、言った。 「やだ。」 ・・・・食い意地張りすぎだろ。 「そんなに食うと太るぞ。」 「お父さんと違ってちゃんと運動してるから大丈夫だもん。」 ・・・・そう言われると返す言葉がない。 2 「・・・ほっぺたにクリームついてるぞ。」 そう言って、俺は娘の頬を指でぬぐう。 クレープをくれなかった仕返しに、少し強めに、グリグリと。 「う~~~。 子供じゃないんだから自分で拭くよぉ・・・」 「大人はそもそもほっぺにクリームつけないんだよ。」 もちもち。ふわふわ。 ぐりぐり。 3 あっやべ。 クリームを拭ったはいいけど、拭く物持ってねえや。 服で拭いたらルーミィ怒るだろうな・・・・。 ・・・・うんまぁいいや。 「・・・ぺろ。」 「っ?! ちょっ、お父さ・・・っ!!」 うん。あまい。生クリームだいすき。ぺろぺろ。 「っ・・・・・・❤」 ルーミィは何かを言おうとして・・・・ そして、まるで夏の終わりを告げるかのように、盛大に打ち上げられる たくさんの花火たちの音に掻き消されて、 ・・・・何も言えないまま、顔を赤らめて、口をつぐんだ。 4 「・・・・やっぱり一口あげるね。」 そう言うと、娘はクレープをスプーンでひとすくい、俺に向かって 差し出してきた。 そしてそのスプーンの上には・・・・。 「・・・・あの、お父さんイチゴきらいなんだけど・・・・。」 「ふふっ、知ってる♪」 娘はいたずらっぽい笑みを浮かべながらそう言うと、 ぱくっ、と、美味しそうに自分の口へとスプーンを運ぶのだった。